夜勤職員配置加算の新戦略!
ICT導入が介護職員配置基準を変える

夜勤職員配置加算の新戦略!ICT導入が介護職員配置基準を変える

夜勤職員配置加算を取得することで得られる最大のメリットは、サービスの質を落とさず、柔軟に人員配置をできることです。限られた人員で24時間安全かつ安心な介護サービスを提供するためには、職員配置を効果的に行うことが重要でしょう。

本記事では、令和3年介護報酬改定で示された夜勤職員配置加算の要件緩和のポイントやICTの種類、具体的な計算の仕方などについて紹介します。

夜勤職員配置加算とは

夜勤職員配置加算とは

夜勤職員配置加算とは、24時間体制で利用者様のニーズに対応できるよう夜勤職員を手厚く配置した事業所に上乗せされる介護報酬の1つです。介護保険の運営基準では、あらかじめ事業所ごとに、必要な人員の配置基準が定められています。

しかしながら、必要最低限の職員数で事業所運営を行うことは、経営面でのメリットはあるものの、働く職員にとって心身の負担が増加するデメリットが生じることも忘れてはいけません。 そこで、国は令和3年サービスの質を落とさずICT機器を導入することによって、柔軟な人員の配置ができるよう加算取得要件を緩和しました。

加算の対象となる事業所

夜勤職員配置加算を算定できる事業所は、24時間体制で介護サービスを提供する事業所で次の3つとなっています。ただし、施設の運営形態が従来型かユニット型かによって、算定要件や報酬が異なっていますので注意が必要です

施設種別 特徴
介護老人福祉施設 特別養護老人ホームとよばれる施設。利用するには要介護3~5の介護認定が必要。
地域密着型介護老人福祉施設 定員が30人未満の特別養護老人ホーム。利用は原則施設のある市区町村に住民票がある要介護3~5の高齢者。
短期入所生活介護 老人短期入所施設や特別老人ホーム等が、短期間の入所(入浴や排せつ、食事等)の介護等の日常生活上の世話や機能訓練を提供する施設。利用するには要支援1~2や要介護1~5の認定が必要。
介護老人保健施設 在宅復帰や在宅療養支援などを行うための施設です。利用するには要介護1~5の認定が必要。
短期入所療養介護 老人保健施設や療養病床のある病院・診療所等が、看護・医学的管理下の介護、機能訓練等の必要な医療や日常生活の世話を提供する施設。利用するには、要介護1~5の認定が必要。

介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設、短期入所生活介護に共通する夜勤職員配置加算の算定要件

夜勤職員配置加算とは、夜勤を行う介護職員の負担軽減のために、通常の配置基準を超えて人員配置を行った事業所に対して加算されるものです。ICT機器の導入が進み始めた介護現場において、本来「1人分の人員を余分に配置」することが評価の基準でした。
しかしながら、令和3年度の介護報酬改定において、見守り機器の導入により効果的に介護が提供できる場合は、必ずしも1人分配置する必要がなくなりました。
これにより、夜間に効果的に見守り機器を導入することで、日中人手が足りない時間帯に職員配置を行うことができ、介護人材の適材適所が図れるようになっています。

夜勤職員配置加算(Ⅰ)(Ⅱ)の算定要件等<0.9人配置要件>

夜勤職員配置加算(Ⅰ)(Ⅱ)は、令和3年の介護報酬改定において、見守りセンサーの設置基準が利用者様の15%から10%へ引き下げられました。
これにより、気軽にICT機器の導入がしやすくなりました。この加算を取得するためには、以下いずれかの要件を満たす必要があります。

算定要件<0.9人配置要件>
  • 従来型の施設、ユニット型の施設において、人員基準に加えて1人以上の介護職員、看護職員を夜間に配置すること

または

  • 守りセンサーなどの機器を利用者様の10%以上に設置し、センサーの安全有効活用を目的にした委員会の設置と検討会の実施がある場合には、人員基準+0.9人以上の配置をすること

夜勤職員配置加算(Ⅰ)(Ⅱ)の算定要件等<0.6人配置要件>

この加算は令和3年の介護報酬改定で、あらたに設けられた基準です。具体的な要件としては、次のAもしくはBを満たす必要があります。

算定要件等<0.6人配置要件>
従来型の施設、ユニット型の施設において、人員基準に加えて1人以上の介護職員、看護職員を夜間に配置すること

(右の1.2.3すべてを満たす)
  1. 見守りセンサーを利用者様全員(100%)に設置し、センサーの安全有効活用を目的にした委員会の設置と検討会の実施がある場合には、下記基準以上の配置をする
    • ユニット型:人員基準+0.6人以上
    • 従来型:人員基準緩和を適用する場合0.8人
    • 人員基準緩和を適用しない場合(利用者様の数が25人以下の場合等)0.6人
  2. 夜勤職員全員がインカム等のICTを使用していること
  3. 安全体制を確保していること

夜勤職員配置加算(Ⅲ)(Ⅳ)の算定要件等

夜勤職員配置加算(Ⅲ)(Ⅳ)を取得するには、加算ⅠまたはⅡの要件に加えて、以下を満たす必要があります。

算定要件

看護職員または次のいずれかに該当する職員を1人以上配置していること

  • a 介護福祉士
  • b 特定登録者であって、介護サービスの基盤強化のための特定登録証の交付を受けている者
  • c 新特定登録者であって、介護サービスの基盤強化のための新特定登録証の交付を受けている者
  • d 社会福祉士及び介護福祉士法に規定する認定特定行為業務従事者

なお、上記a、bまたはcに該当する職員を配置する場合にあっては、喀痰吸引等業務の登録を受けていることが条件となります。

算定できる単位数

算定できる単位数は、すべて1日単位で設定されています。したがって、利用した日数のみで計算されるため、費用負担が高額になることはありません。
例えば、短期入所の最も安い場合は1日13単位で、高いものは1日20単位です。事業所の種別はもちろん、同じ種別であっても運営形態によって単価が異なるため注意しましょう。

短期入所生活介護の場合

短期入所生活介護は、単独で事業運営をしているか、もしくは特別養護老人ホームで併設運営しているかのどちらかになります。ユニット型のほうが職員配置数も多くなるので、1日あたりの単価は高くなります。

短期入所生活介護の運営形態 加算名 単位数(日)
単独型・併設型
短期入所生活介護
夜勤職員配置加算(Ⅰ)・(Ⅱ) 13
夜勤職員配置加算(Ⅲ)・(Ⅳ) 15
単独型・併設型ユニット型
短期入所生活介護
夜勤職員配置加算(Ⅰ)・(Ⅱ) 18
夜勤職員配置加算(Ⅲ)・(Ⅳ) 20

介護老人福祉施設の場合

介護老人福祉施設の場合、居室面積や構造によって従来型個室やユニット型個室的多床室など、多岐に分かれています。
また、定員によって区分けされていますので、定員30人以下の介護老人福祉施設を小規模特養と表記しています。

介護老人福祉施設の運営形態 加算名 定員 単位数(日)
介護福祉施設及び小規模特養
<従来型個室><多床室>
夜勤職員配置加算(Ⅰ)・(Ⅱ) 入所定員30人以上50人以下 22
入所定員51人以上または小規模特養 13
夜勤職員配置加算(Ⅲ)・(Ⅳ) 入所定員30人以上50人以下 28
入所定員51人以上または小規模特養 16
ユニット型介護福祉施設及び小規模特養
<ユニット型個室>
<ユニット型個室的多床室>
夜勤職員配置加算(Ⅲ)・(Ⅳ) 入所定員30人以上50人以下 27
入所定員51人以上または小規模特養 18
夜勤職員配置加算(Ⅲ)・(Ⅳ) 入所定員30人以上50人以下 33
入所定員51人以上または小規模特養 21

※メモ サイトによって名称が異なったり、略称、記号記載など分かりづらいので、国が出している算定構造表を基本データとして使用。

介護老人保健施設・短期入所療養介護の場合

1日につき、24単位を加算。

  • 利用者数が41人以上の場合、看護職員または介護職員を、利用者数が20またはその端数を増すごとに「1人以上」配置し、かつ、看護職員または介護職員の数が「2」を超えていること。
  • 利用者数が40人以下の場合、利用者数が20またはその端数を増すごとに「1人以上」であり、かつ、看護職員または介護職員の数が「1」を超えていること。

留意点

上記のほか、24時間体制で介護サービスを提供し夜勤職員配置加算を算定できる事業所は、老人保健施設、短期入所療養介護があります。また、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)では、夜間支援体制加算という夜間に職員配置したことに対する加算があります。
ただし、本記事でのテーマであるICT導入による夜間の配置基準緩和の対象事業所には該当しませんので注意しましょう。

夜間の人員配置基準が緩和

夜間の人員配置基準が緩和

介護保険事業所は、運営基準の中で夜間の人員配置基準が設けられています。一定の要件を満たすことでその基準が緩和され、より一層、運営しやすいような配慮がされています。

ユニット型介護福祉施設は利用者様の合計数が20名またはその端数を増すごとに、1名以上とだけ規定されていますが、介護福祉施設従来型の場合、次の表のように定められています。

利用者数 夜間必要職員数(常勤換算数)
25人以下 1人以上
26~60人 1.6人以上
61~80人 2.4人以上
81~100人 3.6人以上
101人以上 3.2人+利用者様の数が100を超えて25またはその端数を増すごとに0.8を加えて得た数以上

夜間の人員配置を緩和しても、介護サービスの質が落ちないことが重要です。国は、具体的な緩和を認めるかわりに、次の4点を必須条件にしました。

  • 「見守り機器」をすべての居室に設置すること
  • 「情報通信機器」をすべての夜勤職員が使用し、利用者様の状況を常時把握すること
  • 安全体制、ケアの質の確保、職員の負担軽減を行っている
  • 委員会を設置し、取組みを検討している

要件緩和の届出までには少なくとも3月以上介護現場で試行することが必要となりますが、試行期間中においては、通常の夜勤職員基準を遵守することが求められます。それぞれの項目について、ポイントを解説します。

なお、常勤換算については、以下の記事でも詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

常勤換算とは?介護施設が守るべき職員数の基準と計算方法を解説

「見守り機器」について

見守り機器とは利用者様がベッドから離れようとした際、または離れたことを感知するセンサーのことです。
センサーが感知した様子をスマートフォンにより職員に通報できる機能を見守り機器として、事業所のすべての居室もしくはベッドへの設置が求められています。

介護の見守りシステム導入による介護サービスの質の向上と介護スタッフの負担削減

「情報通信機器」について

情報通信機器とは、インカム(マイクロホンが取り付けられたイヤホン)など職員間ですばやく連絡できる機器や見守り機器が発信した通知を受け取るタブレットなどのことです。
すべての夜勤職員が使用し、利用者様等の状況を常時把握することが条件になりますが、業務の効率化を図れるメリットは大きいでしょう。

「見守り機器等を活用する際の安全体制及びケアの質の確保並びに職員の負担軽減」の取組みの検討

ICTや最新システムを現場に導入するだけで、業務の効率化が図れたりケアの質が向上したりするわけではありません。
大切なことは、見守り機器などを導入したことによって利用者様の安全やケアの質がどのように変化したのか、どのような場面で職員の負担軽減につながったのか、定期的に取組みを検討することです。

「見守り機器等を安全かつ有効に活用するための委員会」

介護職員だけでなく、管理者を含めた多職種で取組みを検討することが大事です。そのため、定期的に委員会を開催して、記録を残すことが重要になります。

委員会では夜勤職員の意見を尊重しつつ、必要に応じて取組み方法の改善を図ることが主な目的であり、少なくとも3ヶ月に1回開催することが要件です。委員会において具体的に確認する項目は、あらかじめ次の1から5と示されていますので確認しておきましょう。

1.「利用者様の安全及びケアの質の確保」

  • 夜間の定時巡回を利用者様個々の状態に応じて行うこと
  • 見守り機器等から得られる睡眠状態やバイタルサイン情報をもとに、介護職員、看護職員、介護支援専門員その他の職種が共同して、見守り機器等の導入後の利用者様の状態が維持されているか確認すること
  • 見守り機器等の使用が原因で発生した介護事故またはヒヤリ・ハット事例の状況を把握し、その原因を分析して再発の防止策を検討すること

2.「夜勤を行う職員の負担の軽減及び勤務状況への配慮」

この項目は夜勤職員に対してアンケート調査やヒアリングを行い、見守り機器の導入後における、以下1から3までの内容を確認することが求められています。適切な人員配置により職員の負担が軽減されているか、処遇改善の検討が行われているかがポイントです。

  1. ストレスや体調不安等、職員の心身の負担が増えていないか確認している
  2. 夜勤時間帯において、職員の負担が過度に増えている時間帯がないかどうか
  3. 休憩時間及び時間外勤務等の状況

3.「夜勤勤務時間帯における緊急時の体制整備」

委員会では、緊急参集要員(緊急時におよそ30分以内に事業所へ駆けつけることを想定)をあらかじめ設定したり、緊急時の連絡体制を整備したりしておくことが求められます。
組織として緊急時の体制を整備するには、委員会で協議し、その結果を就業規則やマニュアルに記載することが重要です。

4.「見守り機器等の定期的な点検」

委員会では、次の1及び2の事項を行うこととされています。

  1. 日々の業務の中で、あらかじめ時間を定めて見守り機器等の不具合チェックを行う仕組みを設けること
  2. 使用する見守り機器等の開発メーカーと連携し、定期的に点検を行うこと

5.「見守り機器等を安全かつ有効に活用するための職員研修」

夜勤の職員配置を緩和しICTを効果的に活用するためには、その意義と目的を職員自身が理解しておくことが必要です。そのためには、職員全体への研修を行い、安全の確保や効果的な活用方法を共有することが重要といえます。

例えば、見守り機器についての使用方法を確認したり、ヒヤリ・ハット事例をとおして再発防止策を検討したりすることで、サービスの質を落とさず柔軟で安全な体制を確保できます。

夜勤職員配置加算の計算のしかた

夜勤職員配置加算の計算のしかた

夜勤職員配置加算で算出される配置すべき夜勤職員数は、1日単位で要件を満たすルールになっています。 定員が60人以下の場合は、夜勤職員を常時1人以上配置する必要があり、61人以上の場合は夜勤職員を常時2人以上配置する必要があります。

そのうえで、加配要件やICT導入による緩和要件を組み合わせる必要があるため、夜勤職員配置加算の計算はとても複雑といえるでしょう。また、算定要件を確認したとしても、ご自身の事業所が該当するのか、通達文書の解釈が分からない方もいるかもしれません。

そこで本章では、事業所からの具体的な質問に対して国が回答したQ&Aを参考にいくつか紹介したいと思います。

休憩時間は含まれるの?

夜勤の場合でも通常の休憩時間は勤務時間に組み込んで差支えありません。夜勤職員配置加算は夜勤時間帯を通じて職員を配置することにより要件を満たしますが、宿直のように勤務時間の大半を休憩で過ごす場合は該当しないので注意が必要です。

参考:平成30 年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.6) (平成30年8月6日)

最低基準を0.9人上回るとは、どのような換算を行うの?

平成 30 年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)において、国は次のように回答しています。

  • 月全体の総夜勤時間数の 90%について、夜勤職員の最低基準を1以上上回れば足りるという趣旨の規定である
  • 具体的には、1ヶ月30日、夜勤時間帯は1日16時間であるとすると、合計480時間のうちの432時間において最低基準を1以上上回っていれば、夜勤職員配置加算を算定可能とする。なお、90%の計算において生じた小数点1位以下の端数は切り捨てる

参考:平成 30 年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1 問88)

見守り機器の設置ベッドが空床のときはカウントするの?

空床ベッドはカウントしません。利用者様が一定期間入院して不在になっている場合や、次の利用者様が入所するまで一時的にベッドが不在になっていることがあります。

しかしながら、夜勤職員配置加算は介護職員の業務負担と効率化をサポートするための加算ですので、業務が発生しない空床ベッドは対象となりません。

夜勤職員が加配されている時間帯は、宿直職員はいらないの?

見守り機器やインカムなどICTを導入する場合、定員60人の従来型介護老人福祉施設の夜間人員配置基準は、1.6人以上です。

また、すべての利用者様に見守り機器を設置すれば夜勤職員配置加算を算定する際0.8人の加配で足ります。夜勤職員が加配されている時間帯については、宿直職員の配置は不要です。

参考:令和3年度介護報酬改定 Q&A(全国老施協版/令和3年3月25日版)

効果的にICTを導入して24時間安全なサービス体制をつくろう

効果的にICTを導入して24時間安全なサービス体制をつくろう

効果的にICT機器を介護現場に導入すれば、安心で安全な介護サービスの質を24時間保つことが可能です。
加算取得については理解したものの、もし費用面でICT機器の導入をためらっている場合は、購入費用を一部補助するICT導入支援事業という制度を活用する方法もあります。
実施要項や条件、申込方法などは各都道府県によって異なっていますので、ホームページなどで確認しましょう。

事業所として大切な介護人材を守るために今できることは、介護業務の見直しとICTの導入、そして夜勤職員配置加算の取得です。

「HitomeQ ケアサポート」では、スマートフォンを活用したリアルタイムな連絡や情報共有が可能です。業務効率や夜間安否確認最適化サポートを受けながら、地域で選ばれる事業所づくりを支援してくれます。

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