介護職の離職率は高くない!さらに離職率を下げるための対策を解説
介護職の離職率は高いというイメージがありますが、他の職種と比較すると、低水準になっており、近年低下傾向が続いています。しかしながら、慢性的な人材不足の状況は変わりません。
本記事では、さらに離職率を下げていくための対策や留意すべき点を解説します。
介護職の離職率は高くない
介護労働安定センターが実施している介護職の離職率の調査によると、2019年10月から2020年9月までの1年間の介護職の離職率は14.9%でした。
※参考:公益財団法人 介護労働安定センター令和2年度介護労働実態調査の概要
2019年の雇用動向調査結果によると、すべての産業の平均離職率は15.6%※となっており、介護職の離職率は0.7ポイント低い水準にあることがわかります。
※参考:厚生労働省 厚生労働統計一覧 令和2年の入職と離職
つまり、世間一般のイメージとは異なり、介護職の離職率はすべての産業と比較しても、高くありません。次の文章で、離職率の推移がどうなっているのかを見ていきましょう。
介護職の離職率の実態と推移
ここ15年ほどの介護職の離職率の推移を見ていくと、2007年の21.6%をピークにして、徐々に下がってきていることがわかります。ピーク時の07年と2020年を比較すると、離職率は実に6.7ポイント低下しているのです。
離職率が改善されてきた要因の1つとして考えられるのは、賃金の上昇です。しかし、まだ課題はたくさんあります。さらに、改善を進めなければいけない状況だといえるでしょう。
離職率の改善をさらに目指すべき理由
離職率の改善をさらに進めるべきである理由はいくつか考えられます。主なものは以下の2つです。
- 慢性的な人手不足
- 業務内容のマイナスイメージ
どちらも以前から介護職の課題として挙げられていたものです。日本全体の課題と重なる部分もあり、一朝一夕に改善するのは難しいのですが、まず実状を把握するところからは始める必要があるでしょう。それぞれの理由について詳しく解説します。
慢性的な人手不足
介護業界が慢性的な人手不足になっているのは、日本社会が抱える少子高齢化によるところが大きいでしょう。働き手が減っていることに加えて、高齢化が進行することにより、介護サービスに対する需要は今後さらに高くなることが予想されるからです。
介護労働安定センターによる「令和元年度介護労働実態調査の結果」でも、介護職の人手が足りないと感じている介護保険サービス事業所は、全体の65.3%に上っています。この傾向は今後も続くと予想されています
業務内容のマイナスイメージ
介護業界に対するマイナスイメージがあることが理由で、人が思うように集まらないことがあることも課題です。肉体的にも精神的にもきつい職場で、給料などの待遇も良くないというイメージを持っている人が多いことが理由でしょう。
人手不足を解消するためには、離職率を低下させるとともに、就職したい人を増やしていく必要があります。そのためには、いかにして介護職に対するマイナスイメージを払拭していくかが、介護業界全体の大きな課題といえるでしょう。
介護職が離職する主な4つの理由
介護職が離職する原因はいくつかあります。特に多いのは以下の4つです。
- 施設内の人間関係のストレス
- 理念や運営方針への不満
- 結婚・出産・育児・親の介護
- 将来の展望が見えにくいこと
離職率を低下させるためには、まず離職する理由を理解して、一つずつ解消していくことが求められるでしょう。ここでは、離職の主な原因を詳しく解説します。
1.施設内の人間関係のストレス
離職の原因として特に多いのは、施設内の人間関係のストレスです。介護の仕事はチームで対応する業務が多いため、複数の人間とコミュニケーションを取りながら進める必要があります。業務のやりかたの違いや行き違いなどが原因で、人間関係がこじれてしまうケースも少なくない職場といえるでしょう。
また、介護の現場では認知症の施設利用者様の症状が悪化した場合に、厳しい対応が迫られる場合もあります。施設利用者様を看取る場面も出てくるでしょう。つらい状況に直面するケースもでてきます。
誰にも話すことができずに、溜め込むことが精神的な疲労を蓄積させてしまうこともあるでしょう。人間関係のストレスが生じやすい職場環境であるだけに、離職の原因となってしまうケースが少なくありません。
2.理念や運営方針への不満
介護施設の理念や運営方針への不満が原因で、離職するケースが少なからずあります。仕事に対して真摯に取り組む人ほど、介護施設のやり方に共感できない場合には、モチベーションを維持することが難しくなる傾向があるからです。
逆に、介護施設の理念に共感した場合や経営陣との信頼関係を構築できている場合には、施設に貢献しようという意識が高くなることが期待できるでしょう。職員が熱意を持って働けるような施設であることが大切となります。
採用する際に職員となるメンバーとコミュニケーションを取り、理念や方針を共有しておくことも必要でしょう。
3.結婚・出産・育児・親の介護
介護職員が離職する原因として、結婚・出産・育児など、職員のライフステージの変化によるケースもあります。また、親の介護のために時間が取られてしまい、仕事に支障がでてしまったために、離職するというケースもあるでしょう。
産休、育児休暇、さらには職員が介護との両立ができるように、働き方の選択肢を増やすなど、経営サイドが対策を考えていく必要があります。
4.将来の展望が見えにくいこと
将来の展望が見えにくいことも離職の要因となっています。規模の小さい施設では役職へのキャリアアップが難しい場合もあり、将来的に賃金が上昇することも期待できず、このまま介護職を続けることに不安を感じて辞めてしまうケースもあるのです。
介護職という仕事が嫌だということではなくて、介護施設の上層部が職員に対して、未来への道筋を示すことができていないということでしょう。スキルアップ研修制度が、効果的に機能していないという課題もあります。
資格習得のサポート、役職へのステップアップなど、職員の将来への道筋を作っていくことが求められているといえるでしょう。
介護職の離職を減らす具体的な4つの対策
介護職の離職を減らすためには、さまざまな角度から業務改善を行うことが必要になります。主な改善のポイントは、以下の4つです。
- 教育環境の充実
- 労働環境の改善
- 職員の評価システムの改善
- コミュニケーションの円滑化
どのポイントについても言えることは、改善を継続しつづけること、そして改善の効果を検証して改良し、さらなる改善を進める必要があることでしょう。それぞれについて詳しく解説します。
1.教育環境の充実
介護職員の離職を防止するための対策としてまず挙げられるのが、教育環境の充実です。教育研修や勉強会を定期的に実施して、介護士のスキルの向上、資格の習得などをサポートすることにより、キャリアアップの道筋をつけることも効果的でしょう。
教育ツールを活用することで、効率的に学習効果を上げることも期待できます。知識や技術の向上、資格の習得は介護士の賃金の上昇にもつながるでしょう。介護士の将来への不安を払拭するとともに、仕事に対するモチベーションのアップも期待できます。
2.労働環境の改善
労働環境の改善も、介護職員の離職対策として有効です。具体的には残業時間を減らし、休日をしっかり確保することがポイントになります。職員の肉体的および精神的な健康とモチベーションの向上、さらには離職率の低下につながると期待できるでしょう。
労働環境を改善するためには人員を増やすことが有効ですが、人手不足という状況もありますし、人件費がかさむため、簡単ではありません。人員を増やすことが難しい場合には、業務の効率化が必須の条件となります。
業務内容の見直し、ITツールの導入など、さまざまな角度から職員の負担の軽減を図ることが求められるでしょう。
3.職員の評価システムの改善
職員の評価システムを改善することで、離職率の低下につながることが期待できます。「正当に評価されていない」と感じたことが理由となって、介護の仕事を辞める人が少なからず存在するからです。
職員が、公平に評価されていると実感できるシステムを構築する必要があります。職員同士の相互評価を反映させる、評価の仕方をわかりやすく可視化するなど、さまざまな方法を柔軟に組み合わせて、評価システムを改善していくことが大切です。
4.コミュニケーションの円滑化
コミュニケーションの円滑化は、職員の離職率を下げる対策としてきわめて有効であると考えられます。介護職員が離職する大きな理由となっていることが、人間関係のストレスだからです。
介護という仕事は、職員同士の連携が重要になります。コミュニケーションを密に取ることが、誤解や行き違いを減少させる効果もあるからです。また、上司に相談することや同僚と会話することが、ストレスの解消につながることも期待できるでしょう。
ITツールの活用の3つのメリット
介護職員の離職率を低下させるためには、ITツールを効果的に活用することが有効であると考えられ、また、さまざまなメリットが期待できます。主なメリットは以下の3つです。
- 介護士の教育が効率的に行える
- 業務の効率化が進み、仕事にゆとりが生まれる
- 情報共有の効率化が人間関係改善につながる
それぞれ詳しく解説しましょう。
1.介護士の教育が効率的に行える
ITツールを活用することで、介護職員の教育を効率的に行うことができます。スマートフォンやタブレットを使用することによって、いつでもどこでも教育を受けられるようになるからです。職員一人ひとりのレベルにあったカリキュラムの選択もできます。
動画を使うことで、実技についてもある程度の知識を習得できるでしょう。また、双方向のコミュニケーションを取ることによって、個別の課題にも対応できます。
2.業務の効率化が進み、仕事にゆとりが生まれる
行動感知センサーによって利用者様の行動を見守るケアシステムを導入することで、介護職員の業務を大幅に効率化できます。結果として、介護職員の仕事にゆとりが生まれるでしょう。
また、紙で行っていた介護レポートをITツールによって電子的に記録する方法に変更することで、作業時間を短縮するだけでなく、情報の共有が容易になります。さらに、管理システムを導入することで、シフト管理や勤怠管理の効率化も図れるでしょう。
3.情報共有の効率化が人間関係改善につながる
すべての報告書を電子化することによって情報が共有・可視化され、業務上の行き違いが減ることが期待できます。指示内容もすべて記録されるので、聞き間違いや聞き逃しもなくなるでしょう。
また、管理システムと併用することによって、業務量が一部の人間に偏ることを防げます。効率化につながると同時に、公平かつ適切な仕事の分担が可能になり、人間関係が原因となるストレス軽減の効果があると考えられるでしょう。
ビジネスチャット機能を活用することで、コミュニケーションの円滑化を図れます。職員同士の効率的な連携が可能になり、結果として人間関係のストレスも減少し、社員の満足度の向上や離職率の低下につながることも期待できるでしょう。
ITツールを導入して離職率を改善しよう
一般的なイメージとは異なり、介護職の離職率は高くありません。年々、低下する傾向にあり、ここ数年ではすべての職業の平均離職率よりも下回っている結果が出ています。職員の賃金の上昇や資格習得サポート制度などの効果が出ているといえるでしょう。
しかし、慢性的な人手不足が続いており、さらに離職率を低下させる対策を取る必要があります。そのためには、教育環境の充実や労働環境の改善、評価システムの改善、施設内でのコミュニケーションの円滑化などが求められます。
これらの課題を解決するためには、ITツールの導入が効果的です。行動分析センサーが利用者様の動きを分析し、スマートフォンに映像で通知する仕組みになっているHitomeQ ケアサポートを導入することで、職員の負担を大幅に軽減することが可能になります。
このほかにも、記録入力業務効率化・情報共有効率化・スタッフ育成・業務標準化など、多彩な業務を効率化する機能が装備されています。ぜひHitomeQ ケアサポートの導入をご検討ください。