介護業界の人材不足対策にはICTを活用した効果的な人材育成の仕組みづくり
介護職は、加速する高齢化問題を一手に担うエッセンシャルワーク。その介護業界における離職率の高さは、もはや日本の未来を左右する社会問題だといえるでしょう。介護スタッフが離職してしまう理由は多岐に渡りますが、ひとつの対策として、人材育成の仕組み化と、それによる生産性の向上が挙げられます。
本記事では、その人材育成方法を解説し、メリットなどについてもご紹介します。
介護スタッフの人材不足の現状
まずは、介護業界における人材不足の現状を見ていきましょう。
2025年問題という人材不足の懸念
2025年には、第1次ベビーブーム時代に生まれた団塊の世代が75歳以上となり、後期高齢者の数が2,200万人近くに達すると予測されています。それに伴い、介護業界の負担も急激に増加。2025年に必要だといわれている介護職員数は、約243万人にも上ります。2019年時点での職員数推計と比べると、2025年までに約32万人も増員しなければならない見込みです。
介護にあたる人材の確保・育成はまさに一刻を争う重要課題なのです。
介護スタッフの高齢化も進んでいる
それでは、前述の推計を元に、ただスタッフの増員だけ考えていればいいかというと、そうではありません。2019年度の統計によると、介護に従事しているスタッフの平均年齢は48.8歳。60歳以上のスタッフの割合が22.4%と、介護にあたっているスタッフ層自体も高齢化しているのです。
人口全体の高齢化により、退職していくスタッフもまた増えていくという事実も忘れてはなりません。
介護サービス利用者が一方で増えている
2000年に介護保険制度が創設されてからの20年で、介護サービスの利用者数は約3.3倍に増加。要介護認定者の数も3倍に膨れ上がっています。
一方で、全体としての65歳以上被保険者数の増加率は約1.6倍にとどまっていることと比べても、高齢者人口に対する介護サービスの需要が加速度的に高まっていることがわかります。
有資格者の採用は難易度が高い
上記のような人材確保の緊急度を鑑みれば、即戦力となる介護福祉士などの有資格者を積極的に採用したいところです。
しかし、2021年3月時点での介護サービスの有効求人倍率を見てみると、3.44倍と他の業種に類を見ないほどの売り手市場となっています。このような状況では、有資格者のみに絞って人材を採用するのは非常に難しく、未経験者にまで裾野を広げて採用し、いかに新規人材を育成すべきかという観点にシフトすべきだといえるでしょう。
介護スタッフの離職の主な原因
慢性的な人材不足に追い打ちをかけるのが、今いるスタッフの離職率の高さです。
現状の問題に向き合うために、離職にいたる原因を探っていきましょう。
職場の人間関係
介護労働者に対する最新の調査で、男女共に離職理由として多かったのが「職場の人間関係に問題があった」という理由です。人手不足が続けば、スタッフのケアもおろそかになり、ピリピリとした雰囲気が職場にまん延することは容易に想像がつくでしょう。
人事異動などの対策を講じることも難しいとなれば、職場の人間関係の悪化が退職に直結してしまいます。
出産・子育てといったライフイベント
女性の離職理由で最も多いのが、「結婚・妊娠・出産・育児」です。医療福祉という職務の性質上、どうしても長時間の労働が必要となると、休みづらい職場環境がネックになってきます。
まずは人員を増やし、女性のライフイベントに応じた休職制度などを整備し、休みやすく戻ってきやすい職場づくりを進めることが重要でしょう。
施設運営方針とのギャップ
次に多い理由として挙げられたのは、「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があった」というものです。残念ながら、近年介護施設における高齢者虐待などの痛ましい事案が多く発生しています。
この事実からも、人手不足による介護の質の低下など、介護業界が抱える根深い問題が見てとれます。
人材不足は人材育成の仕組み作りで少しずつ地盤を固めていく
上記で挙げてきた離職理由の根底にある問題は、新たな人材を確保できないことにより、今いる人員がハードワークを余儀なくされているという実態です。それを解消するためには、新しい人材の育成に取り組むよりほかはありません。
さらに、その人材育成を仕組み化することができれば、個人の負荷を減らし、その結果、全体的な生産性の向上まで期待できます。
一般的な人材育成の仕組みと課題
一口に「人材育成」とはいっても、その方法は様々です。
研修とOJTの2つが一般的ですが、それぞれに長所と短所があります。
研修では現場に持ち帰られるものが少ない可能性
厚生労働省が、多様な人材確保のために推し進めているのが介護に関する各種研修です。未経験者に向けた「入門的研修」から、「生活援護従事者研修」「介護職員初任者研修」「実務者研修」と、従事したい職務内容に合わせてステップアップしていくことができます。
研修では様々な知識を得ることができますが、得た知識を実際に現場で生かせるかどうかは個人の熱意と力量にかかっており、実践面での不安感が否めません。
OJTでは十分に時間を取ることができない可能性
実際に現場に出て、先輩スタッフと介護にあたりながら知識を得ていく方法がOJT(職場内教育)です。実務経験をとおして個別の対応方法を学んでいける点では効果が高いといえますが、指導を担当する側の負担がかなり大きくなってしまいます。
人材不足の現状を鑑みると、現場において十分な教育を行う時間がとれない可能性が考えられます。
現場のノウハウを分かりやすく体系化。すぐに見て使えるナレッジ整備
OJTの良さは、実態に即した経験が得られること。対して研修の良さは、先輩スタッフの時間を取らずに知識が得られることです。この2つのいいとこ取りができれば、効率よく人材育成がすすめられるでしょう。そのためには、生きたノウハウをいかに作るかがポイントとなってきます。
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介護現場に人材育成の仕組みを導入するメリット
ここで、人材育成を仕組み化することのメリットを3つご紹介します。
生産性の向上に伴う介護の質の向上
人材育成の手間をかけずに、即戦力となる人材が得られるため、現場の負担を大幅に減らすことができます。現場全体の生産性が高まれば、もっと質の高い介護を提供することができるでしょう。
負荷軽減による離職率の低下
スタッフ一人ひとりの体力的な負担が減れば、精神的な余裕が生まれます。精神的なストレスがなくなれば、人間関係もより円滑になり、職場環境の改善が見込めます。
また、誰もが休みやすい環境をつくることができれば、女性の出産・子育てに伴う離職も避けられるでしょう。
介護のノウハウを持った貴重な人材を最大限に生かせるという意味で、離職率の低下はとても大きなメリットとなります。
早期活躍を見込める間口の広い新規採用
確実な成果が見込める人材育成のノウハウさえあれば、たとえ介護職の未経験者であっても積極的に採用することが可能となるでしょう。
幅広い人材を早期に確保し育成していくことは、今後の日本の超高齢社会を支えていくという社会貢献にも繋がります。
介護業界の実務にこそ、ICT技術の導入で入居者様との本来の時間を増やす
本記事では、介護の現場にこそ、あえてオペレーティブな育成システムを構築することをご提案してきました。
これは、従来の真心ある属人的な介護の質を否定するものではまったくありません。これまでの経験則に基づく高い介護の質を、どのようにして全体に広めて定着させていくかというのが、介護現場にICTを導入する際のポイントなのです。そうすることで、介護の本来の仕事である「人に寄り添う時間」を増やすことができます。
施設の運営実務を効率よく行える弊社のサービスが、より温かい職場づくりの一助となれれば幸いです。