介護現場で抱える問題深刻化する「人」の課題を解決するICT技術
日本の介護業界は人手不足が深刻化しており、現場でも「人」の課題や悩みは尽きないことでしょう。そこで、現場のスタッフの負担を減らし、より快適に働けるように導入したいのが「ICTサービス」です。
ここでは、現状の課題・問題からICTサービスを利用した解決方法まで分かりやすく解説していきます。
介護業界を取り巻く、さまざまな問題点
介護業界にはさまざまな問題があり、解決の糸口をつかむのが難しい問題ばかりです。
介護を必要とする高齢者の増加
2019年時点、日本の総人口に占める75歳以上人口の割合は14.7%、1,849万人にのぼります。2025年には4人に1人が後期高齢者になると言われ、介護を必要とする人は増える一方です。
引用元:内閣府「令和2年版高齢社会白書(概要版)」
介護職員の人手不足や待遇の改善
介護労働安定センターが実施した2019年「介護労働実態調査」の結果によると、65%の事業所で従業員が不足していると回答しており、その不足感は年々増加しています。
新規採用が困難なことに加え、低賃金や労働条件などに不満を募らせたことによる離職も多く、人手不足が在職者の仕事増につながり、さらなる離職につながるという負のスパイラルになっています。
施設不足による介護難民の発生
東京商工リサーチによると、2020年に「老人福祉・介護事業」倒産が相次ぎ、118件と過去最多を更新しています。
さらに休廃業・解散となると2020年1月から10月までで406件と、市場から撤退する例が後をたちません。新型コロナウイルスの影響もありますが、現状ではコロナ関連倒産は7件。実は2016年以降、毎年100件以上が倒産していることからも施設運営の難しさが伺えます。
介護を必要とする人が増える一方、施設の減少が続けば、介護難民を急激に増加させる懸念があります。
引用元:東京商工リサーチ「2020年『老人福祉・介護事業』の倒産状況」
要介護者への虐待の増加
社会問題となっている要介護者への虐待も増加傾向にあります。
身体的虐待をはじめ、心理的虐待や性的虐待、経済的虐待、ネグレクトの5つが高齢者虐待として区分されています。
ご家族などの擁護者による虐待だけでなく、介護従事者による虐待の例もあり、その原因となっているのは人員不足による職場環境の悪化や職員の教育不足だとも言われています。
2025年「社会保障の問題」
団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年問題。
療費や介護費用が急増すると言われており、介護従事者や介護施設も 今以上に必要になるでしょう。
介護現場で顕在化する人課題
介護現場で解決したい最重要課題が「人」です。
人に関して多くの事業所で抱える問題を挙げていきます。
採用した人材が定着しない
人材が定着しない理由として多く挙げられるのが人間関係です。
介護の現場は忙しく、スタッフ同士のコミュニケーションが不足している職場が多く存在します。それにより新規採用者は孤立感を感じ、職場になじむことができません。
また、待遇や業務自体への不安からキャリアプランを見通すことができずに他業種へ転職してしまう事例も多くみられます。
採用した人材への教育時間が取れない
新規採用の人が定着しない理由の1つにもなっているのが、在職者が仕事を教える時間が圧倒的に少ないこと(もしくは教育の時間が圧倒的に少ないこと)です。
新しく入った人が何をすればいいのか分からない中で、教えてくれる人がいない、聞いても嫌な顔をされる状態が続くことはモチベーションの低下に拍車をかけてしまいます。
極端な場合はヒエラルキーができて組織の風通しが悪い
資格の有無や勤務歴の長さでヒエラルキーができている職場では、新規採用者の定着率が著しく下がります。在職中の人たちのメンタルにも大きく影響します。
介護現場での人課題を解決するために取り入れられる手法
悩ましい「人」の課題を解決するために取り入れたい手法を紹介します。
全スタッフのストレスチェックを定期的に実施する
2015年に労働安全衛生法の改正により、50人以上の労働者がいる事業所で年に1回のストレスチェックの実施が義務付けられました。50人以下の事業所でも厚生労働省が作成した「職業性ストレス簡易調査票」を使えば簡単にストレスチェックができるので、活用してみましょう。
サービスや教育の質を担保するための指導マニュアルを整備する
新規採用者の教育に、教育係の社員を用意できない事業所は多いでしょう。
だからといって教育をしなくてもいいわけではありません。事業所で行っているサービスや理念などをしっかりと盛り込んだ指導マニュアルを作成することで、一定の教育を省くことはできます。
マニュアルを作った上で、仕事について聞いてくる新人を快く受け入れる土壌づくりが大切です。
キャリアや技能に応じた給与・待遇制度を設ける
将来の不安から優秀な職員が離職してしまうのはとてももったいないことです。
キャリアや能力に応じた給与・待遇制度を設けて、長く働ける環境づくりが大切です。
上司が個人面談にて人間関係の悩みを聞く場を設ける
従業員の悩みを聞くのも上司の仕事です。
職場での仕事のやり方や人間関係など、不満や不安を聞く機会を設けるのも手です。ただ、2人分の労働力が一時的になくなるので、人手不足の事業所では難しいかもしれません。
介護現場の業務プロセスの最適化で、「人」課題を解決する
介護事業所の歴史から見ても、人材が充足して業務がスムーズに進むようになる日は、このまま待っていてもくることはないでしょう。
そこで必要なのは、業務の効率化で人材不足を補うことです。
では具体的にどういったことをすべきでしょうか。
科学的介護をもとにしたICTサービスの導入
書類作成・シフトの引継ぎなど、介護業務には介護以外の仕事に時間を取られることが多々あります。そういった細々した業務をICTの導入により減らすことができます。
また、2021年度の介護報酬改定に伴い、ICTを導入する事業所は収益増の取り組みがしやすいように見直し・新加算が創設されます。導入する良いきっかけになるでしょう。
見守りという観点だけでなく、最適な業務フローを構築する
介護施設において大きな負担となっているのが見守りです。
見守りセンサーや見守りシステムなど各社がさまざまなサービスを展開しています。見守りもしつつ、データも活用できるサービスが多いため、介護者の生活リズムを分析して異常を検知できるようにすれば、見守りの負担を大幅に減らすことができます。
コスト面での不安は補助金とサービスのカスタマーサポートで解決
すぐにでも導入したいがコストがどれだけかかるのか、導入する際の手間や時間を割くことができないなど、二の足を踏んでしまう方もいるでしょう。金銭的コストに関しては行政の補助金を利用できるケースもあるので、うまく活用をしましょう。
また、導入時の時間コストについてはカスタマーサポートに相談をしながら、効率的・効果的な導入を目指すと良いでしょう。「自社に必要なサービスはどのようなものか?」、「生産性を上げるポイントはどこにあるのか?」のお悩みの方はコニカミノルタが提供している「業務診断」サービスがおすすめです。
生産性のレポートや業務可視化レポートで自社の課題・解決法を提案してもらうことができ、本質的な改善を目指せます。
介護現場の人課題にICT化の取り組みで安心できる施設づくり
人材不足といった事業所レベルの問題から、ヒヤリハットや虐待など現場レベルの課題まで介護業界を取り巻く問題解決は待ったなしです。
国が介護現場でのICT利用促進をしている今、補助金など利用して導入を考えてみませんか?現場と経営者の間で悩みの多い施設長は自身が相談できる場所はそう多くはありません。
「どこから手をつけたらいいのか…」とお悩みの方も、ぜひ一度、無料相談をご活用ください。